文化庁メディア芸術祭

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ごく一部のすごく狭い所では、なぜか「メディアはもうだめだ。」「メディアと名の付く所は先行き危うい。」「メディアは人が集まらない。」と、いう説が繰り返しささやかれている。

ものごとがうまくいかないことを景気のせいにしたり、人口減少のせいにしたり、名前のせいにしたり。結局の所、どこかに責任を押しつけたいだけなようにも聞こえる。

先日、文化庁メディア芸術祭に行ってきた。とにかく、もの凄い人の数だった。入場制限するほどで、老若男女、本当に子供からお年寄りまでが、作品の前に列をつくって、「わー」とか「へー」とか、「お〜」と言いながら作品を楽しんでいた。

思うに、ようやくこうした表現分野が一般に認知され始めたのではないかと思う。
まだまだこれからなのだと思う。

専門家に限って、「メディア芸術祭は面白くない」、「年々つまらなくなる」なんて話を聞く。ある側面ではそれは本当かもしれない。そのある側面というの は、「技術的な新しさ」というものが、目の慣れた専門家にとっては、あまり魅力的でなくなってきたからではないだろうか。最先端技術というのはそうそう毎 年新しいことが起きたりはしない。更に、メディア芸術祭の場合、一般に流通したものに賞を与えている傾向があるため、既に「技術的な新しさとしての驚き」 は薄れている可能性が高い。

恐らく、もっと表現の分野に目を向けていくことが必要なのではないかと思う。繰り返し出会っても、わくわくさせられ続ける表現。理屈抜きに心を捉える表 現。そうした表現力を持ったメディアアートは既に沢山存在すると思うし、そうしたものに目を向け、更にもっと発掘していくことも重要なのだと思う。

これまでは、極端に先端技術だけが注目され続けた。絵画で言うなら、新しい素材、新しい技法にばかり注目が集まりすぎていた。写真で言うなら、カメラの新 機能にばかり、心を奪われていた。これからは、それらを用いて、何が表現されているのか、そうした面に意識の向いた観客と主催者がより増えていくことで、 メディアアートが文化として根付いてくるのではないかと思う。そして、そうした意識を持った人を育てていくことも大事なのだと思う。

まだまだ始まったばかり。ほんの入口にさしかかったばかりなのだと思う。

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