Ars Electronica Centerへ行こう その6 「Garden展示の裏側」

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今回は何をしにArs Electronica Center (AEC)へ行ったかといえば、Gardenの設置のため。センターのリニュアールに合わせて展示内容が入れ替わることになり、新しくできたFunkyPixelというフロアにGardenを常設展示させてもらうことになった。

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上の写真がリニュアール後。下の写真がリニュアール前。右側の教会の建物側へセンターが拡張されたのが解るだろうか。更に地下が大きく掘り下げられ、教会の右側にその先端が着きだしている(真ん中のドームは新年のイベント用の仮設テント)。以前の建物はそのままガラスのファサードに包まれる形で残されていて、基本的な構造も変わらない。ガラスのファサードにはLEDライトが仕込まれていて、夜になるとこれが様々な色を発し、建物全体が未来的な輝きを放つ仕組みになっている。

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リニュアールによって増築された地下3階にメインギャラリーが新設された。Funky Pixelはその地下3階のメインギャラリーの横にある6歳以上の低年齢層をターゲットとしたエリアで、僕の作品の他、デジスタアウォードで大賞を取って、その後市販のゲームソフトになった「無限回廊」、メディア芸術祭でも紹介された「levelHead」などが展示されている。(他の展示作品の紹介はこちら)
各展示エリアには、アーティスト・イン・レジデンスで滞在中にオガワエミコさんがデザインしたかわいいアイコンがあるのだが、Funky PixelのアイコンはGardenをモチーフに作ってくれたそうだ。とてもうれしい。
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さて、仕事の方はというと、今回の展示場所は実はそれほど大きくはない。建物の構造上の制約もあっていろいろ工夫をしながらの展示となった。事前にスタッフとメールで打ち合わせをしてはいるけれど、やはり現場に来てみて初めて解る問題なんかもあって、インスタレーションの展示というのはなかなか大変。空間全体のコンセプトに合わせて庭の形状を曲線にしたり、周辺のソファーの配置を換えさせてもらったり、 照明をあれこれ調整したり、とにかく現地スタッフとの交渉の連続。でも、AECのスタッフはとても優秀で新設なので、すごくやりやすかった。特に今回は上海の展示でもお世話になったMichaelがついてくれたので安心して設営することができた。
それにしても、 AECのスタッフはよく働く。オーストリア人はあまり働かないなんて聞いていたけど、クリスマスシーズン、年末年始だというのに、何時寝ているんだと言うぐらいに働いている。でも、なんとなく、みんなおっとりしていて、キリキリしていないのが国民性なのかとてもよい。
隣ではスペインから来たというパブロが、必死で「levelHead」のセットアップをしていた。彼はアシスタントで、作家本人は今回は来ていないらしく。彼もオープニングを待たずして次の会場へ仕事で移動しなければ行けないのだとか。売れっ子作家がEU内で展示する場合は、こんな感じなのかもしれない。

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今回初めて利用した二つのデバイス。左はVGAケーブルをイーサケーブルで延長するためのコンバーターRextron VGA Extender (http://www.rextron.jp/products/vga_ev.html)。繋げる順番やコンバーターの組み合わせを間違えると、うまくいかないということが起こるようだが、そうとうの距離まで延長できるらしい。

右側がファイヤーワイヤーを延長するケーブル LINDY FireWire Extension Cable (http://www.lindy.co.uk/firewire-extension-cable/32908.html)。ファイヤーワイヤーは1本で最長4.5mまでという規格になっていて、その制約を解消するためのもの。

ビデオカメラを使ったインスタレーションの場合、PCとカメラとを何で繋ぐかが最近のちょっとした問題。ビデオカメラ周りの規格がコロコロ変わるので、それに対応したコンバーターを海外で見つけるのがなかなか難しい。日本から持って行っても良いのだけど、常設展示の場合、ずっとその機材を貸し出すことになってしまうので、それも難しい。

今回 改めて感じたことだけど、東京でメディアアートの展示をできるというのは、世界的に見て非常に恵まれた状況なのだと思う。家電量販店はあちこちにあるし、100円ショップでもちょっとした材料はすぐに手に入る。東急ハンズもある、ホームセンターもある。夜中の2時にケーブルに不具合があってもドンキホーテに行けばすぐ買える。そして秋葉原に行けば、あらゆるコンバーターがあり、あらゆる電子部品がある。そして更に、展示会エンジニアの金築さんや、西野さんといったメディアアートの展示を熟知したスペシャリストがいて、展示をサポートしてくれる。これは、恐ろしく恵まれた環境だと、本当に思う。AECのテクニカルスタッフもベストの仕事をしてくれたと思うが、プロジェクタの設置方法一つにしても、本当に細かいところまで仕上げていく日本の展示会エンジニアの技術は世界一だとも感じた。

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展示準備はオープン前日深夜のギリギリまで続けられていた。メインギャラリーのRoboLabではPlenの調整をギリギリまでやっている様子だった。この苦労があのかわいらしい動きをつくっているんだろうなと思う。

Planの紹介ムービー

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